2016.01.24

『七十歳死亡法案、可決』 垣谷美雨(著) 感想

第一章は「早く死んでほしい」という衝撃的なタイトルから始まる。
2020年七十歳死亡法案が可決された
施行は二年後。

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長期間、親や祖父母など身内を介護した経験のある方なら、
自分と重ね合わせる箇所が必ずあると思う。


宝田家の主婦・東洋子(とよこ)は姑を介護している。
あと2~3年の命と思われていた姑は、
介護を始めてから10年以上経過しても
手厚い介護のおかげか、寝たきりだが元気に生きている。


東洋子の夫は仕事人間で、
介護にちっとも協力してくれない。
娘に介護の手助けを求めた東洋子だが、
娘はそれが嫌で家を出て一人暮らしを始めてしまう。


息子は一流大学を出て大手の銀行に勤めるが、
人間関係が原因で退職した。
その後、再就職先を探していたが、うまく見つからず、
引きこもり状態になっている。


宝田家の家族5人、それぞれの思いが、
とても巧妙に描かれている。


姑の介護をしても、感謝の言葉すら
かけてもらえない東洋子だが、
夫に愚痴をこぼすこともなく、
食事も栄養バランスを考えたものを毎食用意している。


姑のオムツ交換も、本人が一番屈辱的だろうと、
呼び捨てで大声で「東洋子ー!」と呼ばれても、
淡々とこなしている。


買い物へ出かけても、ほんの少し帰りが遅いと
姑に嫌味を言われてしまう東洋子は、
ストレス発散する場がない。


でも、たまには買い物帰りに
温かい飲み物でも飲みたいとカフェに立ち寄るが、
もしそこに知っている人がいたら…と、
近所の目が気になり引き返してしまう。


そんな生活も、あと2年の辛抱だ。
七十歳死亡法案が施行されたら、
東洋子は介護から解放される。


だからといって大喜びもできない。
東洋子もその法案が施行されたら、
そう長くは生きていられない。


夫の姉妹たちは、姑の遺産は欲しいが、
姑の介護はしたがらず、口ばっかり出す。


あと2年…そう思っても
ストレスはたまるばかりだ。
そしてついに・・・・・・


東洋子だけの思いが描かれているのではなく、
息子の正樹の視点から見た世の中も、
非常にうまく表現されている。


引きこもり歴が長くなれば就職も難しくなるが、
何度も面接で落ちるうち、やる気もなくなってくる。
親が亡くなっても、財産は残してくれるだろうと、
正樹は甘いことを考えながらも、
バイトをする勇気さえないダメな自分が嫌になっている。


引きこもりの正樹はネットサーフィンで
中学時代の同級生のブログを見つける。
ある日そのブログに…。


あまり書いてしまうと読む楽しみが減ってましうので、
このへんでやめにしよう。


介護というのは、される側が一番つらいと思うが、
それは分かっていても、十年、二十年と介護生活が続くと、
介護する側の精神的苦痛も相当なものだ。


第一章の「早く死んでほしい」というタイトルほど
強く思わないまでも、
もうそろそろいいんじゃないか、
もういい加減、私を自由にしてほしい…と、
ほんの一瞬でもそういった考えが
頭をよぎっても誰も責められないと思う。


宝田家の姑は、他人に介護されるのを嫌がるため、
東洋子はひとりで介護を担っている。
他人に家の中に入られたくないお年寄りは多いと思う。
気持ちは分かるが、介護する者がひとりだと、
その人が倒れたり、いなくなったりしたら、
にっちもさっちもいかなくなる。


最後がどうなるのか気になって、
何日かに分けて読んだが、
時にイラッとしながら、時に良かった…と思いながら、
最後は安堵した。


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