2017.07.09

コンビニ人間 村田沙耶香/著 読後感

読み終わったあと、少しばかり気持ち悪くなった。

じわじわとした気持ち悪さ。


主人公の女性はたぶん広汎性発達障害なのだろう。

広汎性発達障害は人によって症状が違う。

見た目では分からない場合が多い。

だからこそ、本人も家族もつらい思いをする。


彼女もコンビニ店員として働いている間は、

普通のバイトよりも優秀でしっかりした店員だ。


しかし、彼女の食生活はというと、

ごはんと、火を通したもやし、イモ、大根、

味付けがほしければ、醤油を少々。

個人の好みだから、悪いとは言わないが、

普通の人には耐えられない食事だ。


でも、彼女がコンビニ店員でいる間は、

お客様からすれば、彼女はごく普通のコンビニ店員であり、

誰も彼女を変だとは言わない。

彼女にとってはコンビニは心地よい場所だった。


だけど世間はそれだけでは許してくれない。


普通の人でいるためには、彼氏も作らなくてはいけない。

ヒモ以下の男であっても、彼女にとっては

普通の人でいるためには必要な男が、

ひょんなことから家に転がり込んでくる。


男にとっても、彼女は好都合な女だった。

お互いに好都合…とはいかなかった。


なぜなら、男が彼女からコンビニの仕事を奪ったからだ。


彼女はコンビニの中でだけ、普通の人でいられるのだ。

普通の人以上の力を発揮できるのだ。


読みやすい巧妙な文章ですぐに読めた。

なのに読後に少しばかり気持ち悪くなったのは、

メビウスの輪のように、

ぐるぐると同じところを回っているような、

妙な感覚にとらわれたからかもしれない。

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2017.06.26

『蜜蜂と遠雷』恩田陸 直木賞&本屋大賞 お勧めの本です♪

コミックの『ピアノの森』のようなストーリーかと思ったが違った。

登場人物がいい人ばかりで、

ここ数年で読んだ本の中では、

一番好きかもしれない。


実際のピアノコンクールに忠実な結末だったと思う。


単にピアノが上手なだけでは

世界に通用するプロのピアニストにはなれない。

その人なりの演奏で聴衆をひきつけるのは勿論のこと、

クラッシックの場合は、その曲が作られた背景を想い、

作曲者が求めていた音や解釈を表現しなくてはならない。

しかも、演奏者に華が求められる。


そういったことを踏まえた上で、

きっちりと書かれた作品だった。

かといって、息苦しい感じではなく、

ピアノをあまり聴かない人が読んでも、

ひきこまれる作品だと思った。


直木賞受賞作は、時として、

読み終わった時に後味がよくない作品もあるが、

読書中も読後も終始、気持ちよく読めた。

そういうところが、直木賞と本屋大賞の

W受賞となったのだろう。


読みながら、コンクール参加者が弾いた曲を

その都度、聴くのも楽しそうだと思ったが、

いざそうしようと試みたら、

「いや、これは亜夜が弾いた感じではないな」とか、

「風間塵ならもっと大胆に弾くだろう」

などと、ブツブツ考えてしまい、

結局は著者が文字で表現した『音』が一番ピッタリきた。



登場人物の中で、楽器店勤務の高島明石は、

本選までは無理だろうな…と思いながら、

ついつい応援したくなる人物だった。

彼にも良い結末が訪れて安堵した。


蜜蜂と『雷雲』ではなく、

蜜蜂と『遠雷』というのも、

心憎いタイトルだと思った。


私は『蜜蜂と遠雷』を電子書籍で購入した。

初め、本屋で紙の書籍を手にとった時、

小さな文字が2段に分かれて並んでいたので、

これは読むのに疲れそうだと思ったが、

電子書籍で購入すると、縦一列に文字が並び、

文字の大きさも、好きな大きさに変えられたので、

私の場合、最後まで読めたのは、

電子書籍で購入できたからだと思う。

でも、手元に残しておきたいので、

また紙の本も購入するかもしれない。

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2016.01.24

『七十歳死亡法案、可決』 垣谷美雨(著) 感想

第一章は「早く死んでほしい」という衝撃的なタイトルから始まる。
2020年七十歳死亡法案が可決された
施行は二年後。

七十歳死亡法案、可決 (幻冬舎文庫)/幻冬舎



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長期間、親や祖父母など身内を介護した経験のある方なら、
自分と重ね合わせる箇所が必ずあると思う。


宝田家の主婦・東洋子(とよこ)は姑を介護している。
あと2~3年の命と思われていた姑は、
介護を始めてから10年以上経過しても
手厚い介護のおかげか、寝たきりだが元気に生きている。


東洋子の夫は仕事人間で、
介護にちっとも協力してくれない。
娘に介護の手助けを求めた東洋子だが、
娘はそれが嫌で家を出て一人暮らしを始めてしまう。


息子は一流大学を出て大手の銀行に勤めるが、
人間関係が原因で退職した。
その後、再就職先を探していたが、うまく見つからず、
引きこもり状態になっている。


宝田家の家族5人、それぞれの思いが、
とても巧妙に描かれている。


姑の介護をしても、感謝の言葉すら
かけてもらえない東洋子だが、
夫に愚痴をこぼすこともなく、
食事も栄養バランスを考えたものを毎食用意している。


姑のオムツ交換も、本人が一番屈辱的だろうと、
呼び捨てで大声で「東洋子ー!」と呼ばれても、
淡々とこなしている。


買い物へ出かけても、ほんの少し帰りが遅いと
姑に嫌味を言われてしまう東洋子は、
ストレス発散する場がない。


でも、たまには買い物帰りに
温かい飲み物でも飲みたいとカフェに立ち寄るが、
もしそこに知っている人がいたら…と、
近所の目が気になり引き返してしまう。


そんな生活も、あと2年の辛抱だ。
七十歳死亡法案が施行されたら、
東洋子は介護から解放される。


だからといって大喜びもできない。
東洋子もその法案が施行されたら、
そう長くは生きていられない。


夫の姉妹たちは、姑の遺産は欲しいが、
姑の介護はしたがらず、口ばっかり出す。


あと2年…そう思っても
ストレスはたまるばかりだ。
そしてついに・・・・・・


東洋子だけの思いが描かれているのではなく、
息子の正樹の視点から見た世の中も、
非常にうまく表現されている。


引きこもり歴が長くなれば就職も難しくなるが、
何度も面接で落ちるうち、やる気もなくなってくる。
親が亡くなっても、財産は残してくれるだろうと、
正樹は甘いことを考えながらも、
バイトをする勇気さえないダメな自分が嫌になっている。


引きこもりの正樹はネットサーフィンで
中学時代の同級生のブログを見つける。
ある日そのブログに…。


あまり書いてしまうと読む楽しみが減ってましうので、
このへんでやめにしよう。


介護というのは、される側が一番つらいと思うが、
それは分かっていても、十年、二十年と介護生活が続くと、
介護する側の精神的苦痛も相当なものだ。


第一章の「早く死んでほしい」というタイトルほど
強く思わないまでも、
もうそろそろいいんじゃないか、
もういい加減、私を自由にしてほしい…と、
ほんの一瞬でもそういった考えが
頭をよぎっても誰も責められないと思う。


宝田家の姑は、他人に介護されるのを嫌がるため、
東洋子はひとりで介護を担っている。
他人に家の中に入られたくないお年寄りは多いと思う。
気持ちは分かるが、介護する者がひとりだと、
その人が倒れたり、いなくなったりしたら、
にっちもさっちもいかなくなる。


最後がどうなるのか気になって、
何日かに分けて読んだが、
時にイラッとしながら、時に良かった…と思いながら、
最後は安堵した。


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2015.12.27

ジャンヌ・ダルクの生涯を描いたコミック 山岸凉子 レベレーション 1巻 感想

山岸凉子といえば、『アラベスク』、『日出処の天子』などが、
私は印象深かったが、読んだのはずいぶん以前のことで、
最後に読んだ作品は『テレプシコーラ』だったかな。


ここ最近は新作を見かけないなと思っていたら、
モーニングの2014年12月25日発売号に
ジャンヌ・ダルクを描いた『リベレーション』が発表された。


本屋で見かけたとき、買おうかなと思ったけれど、
モーニングは男性向けの雑誌なので、
コミックになってから買うことに。


レベレーション(啓示)(1) (モーニング KC)/山岸 凉子



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2話が発表されたのは、
2015年2月号というのんびりしたペース。


2015年12月にコミック第1巻が発売されて、
やっと手にすることができた。


山岸凉子って、現在何歳?と思って調べてみたら、
1947年9月24日生まれの68歳だった。


年齢を重ねると、本人が気づかないうちに、
少しずつ何でも雑になりがちだけど、
山岸凉子の絵は色あせない繊細で力強いタッチだった。


タイトルのレベレーション(revelation)の意味は、
隠れていたもの、これまで分からなかったことを暴露すること。


ジャンヌ・ダルクの知られざる生きざまを、
これから少しずつ描いていくのだろう。


1巻はジャンヌ・ダルクが神の啓示を受けて
故郷をあとにするシーンと、
火刑になるシーンが交互に描かれている。


果たしてこの世に正しい戦争というものはあるのか


本の帯に書かれているこの言葉が、
『リベレーション』のコンセプトなんだろう。


私はジャンヌ・ダルクの名前くらいは知っているが、
フランスの英雄ということぐらいしか知らない。


映画にもなっているようだが、見ていない。
映画はかなり過激なシーンが多いようだが、
山岸凉子の作品はどのように展開していくのだろうか。


2巻が待ち遠しいが、今のペースでいくと、
来年のお正月くらいになるのかもしれない。






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2015.05.03

アルジャーノンに花束を 原作 感想

アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス 訳・小尾芙佐


私はドラマの「アルジャーノンに花束を」は見ていない。


以下、原作のネタバレを含みます。


主人公のチャーリイ・ゴードンは精神遅滞者。

年齢は32歳だが、知能は幼児なみだった。


チャーリイはパン屋で働いていたが、

職場の仲間からいじめに遭っていた。

それでも笑顔を絶やさないチャーリイ。


チャーリイは利口になりたかった。

利口になれば自分を見捨てた母親も、

チャーリイのことを好きになってくれると信じていた。


白ネズミのアルジャーノンの実験で、

すでに成功していた知能を高める手術を、

チャーリイは受けることになった。


チャーリイが自ら経過報告を書くという形で、

話はつづられてゆく。


何の予備知識もなく、読み始めた私は、

なんと読みづらい小説だろうと思った。


ひらがなに少し漢字が混じっているが、

句読点が少なく、小さな「っ」が抜けていたり、

「…は」、と書くべきところが、

「…わ」になっていたりする。


読みづらかった原因は、

チャーリーが手術を受ける前、

検査を受けるあたりから

経過報告を書いていたからだ。


訳者の小尾芙佐さんは、

この冒頭の部分を訳すにあたり、

放浪の画家、山下清さんの

放浪日記の文章を参考にしたそうだ。


たどたどしい文章は、

やがて知的な文章へと変化してゆく。

チャーリイがアルジャーノンと

同じ手術を受けたからだ。


初めのうちは、迷路対決で

アルジャーノンに負けたチャーリイも、

やがては勝てるようになり、

ついにはアルジャーノンの研究のための

迷路を作るまでになる。


賢くなったチャーリイは、

職場で皆に愛されるようになったかといえば、

声さえかけてもらえなくなった。


チャーリイの身に何が起こったのか分からなければ、

チャーリイの態度が上から目線に思えたり、

急激な変化を怖く思うのも当然だ。


チャーリイはパン屋をクビになってしまう。


チャーリイはIQが185までになり、

自らに起こった変化を

論文としてまとめるまでに至る。


チャーリイは知能は高くなったが、

感情や情緒が知能の高さに

追いつかないことに苦しむ。


利口になれば愛されると思っていたが、

その期待にも裏切られてしまう。


やがてチャーリイは、アルジャーノンが、

迷路の実験中に、イライラして壁にぶち当たったり、

パニックになる様子を見て、

この手術に欠陥があることを悟る。


アルジャーノンの脳に起こった変化が、

やがて自分の身にも起こるであろうことを

恐れるチャーリイ。


アルジャーノンが死ぬと、

チャーリイはお墓を作ってやった。


チャーリイにとって、アルジャーノンは、

ただの白ねずみではなく、特別な存在だった。


チャーリイの知能は急激に下がり始める。

タイプライターが打てなくなり、

以前、自分が書いた論文の意味が分からなくなった。


それでも前向きな気持ちで、

たとえ意味が理解できなくても本を買い込み、

本の読み方を忘れないように努力するチャーリイ。


知能が落ちたチャーリイは元のパン屋で働く。

昔の同僚はチャーリイがいじめに遭うとかばってくれた。


しかし、ついにはパン屋で働けないほどに、

知能も身体能力も落ちてしまう。

チャーリイは施設に入る決意をした。


チャーリイは経過報告書の最後に

「ついしん」として記す。


「どーかついでがあったら

うらにわのアルジャーノンのおはかに

花束をそなえてください」


そこで小説は終わる。


チャーリイは知的障害センターの教師、

アリスに恋をした。

チャーリイにとって、アリスと愛し合うことは、

ほんのひと時の神秘的ともいえる体験だった。


チャーリイの知能が、高くなり過ぎれば、

アリスと愛し合うことはむずかしくなり、

チャーリイの知能が、低くなり過ぎても、

アリスとの愛は成立しなくなる。


なんとも切ない話だ。


運動神経機能が減退し始めたチャーリイが

イライラしているとアリスが言う。


「高いIQをもつよりもっと大事なことがあるのよ」


チャーリイが1番分かっているであろうことを、

アリスが言ったのだ。

チャーリイは腹を立てる。


チャーリイの状態が安定していれば、

2人はずっと愛し合えたかもしれない。

そう思うと切ない。




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